「いくさの底」古処誠二 著
ミステリーでした
著者の一連の戦争ものかと思いましたが、これは舞台が戦地なだけで純粋にミステリーですね
場所はビルマ(現ミャンマー)なので浅い知識しか持たない私は、日本軍は補給もままならず飢えと風土病と味方の無策によって悲惨な戦地だった、というくらいしか思い浮かばないのですが、解説で千街晶之さんがこの作品当時の状況に触れてくれているのでそれを読んでからの方がいいです
いつものように無駄を削ぎおとした文章なので、今回ばかりはもう少し登場人物の内面に踏み込んでほしかったかな
ミステリーで状況だけを語られると舞台が装置にしかならないので
と、ここまでが感想
あとは蛇足
登場人物の不幸なバックグラウンドとしていじめにあった経験や幼い頃に体験した暴力、実際にあった災害などを出す作家の無神経さにはがっかりする
そのことに正面から向き合い書ききるならいい
ただ数行で履歴書の一文のように出しておきながら全くそれらに言及することなく、だからこの人の心情は推し量れるでしょ、というのが許せません
舞台設定としてもそう
だから今回は危うかった
他のこの著者の作品を知らなかったらこれは読めなかったな
ミステリーとして、面白いです